【第345号】経営者のハードル

1.素直さのハードル

 成長する会社の社長の特徴は「素直」であることだ。人間も成長する人は素直であるが、企業も社長の素直さで、成長の度合いが変わってくる。素直に人のアドバイスを聞き入れ、あるいは自分の過ちを認められる社長がいる会社は、やはり成長するものだ。成長していない組織、あるいは衰退している組織のトップはその逆であることが多い。いい意味での頑固(こだわり)で、品質やサービスのレベルを維持しているなら理解されるかもしれないが、耳の痛いことを言ってくれる役員や側近、外部ブレーンを遠ざけ、“イエスマン”だけを周囲に置くようになると危険だ。会社や組織が衰退するターニングポイントとなる可能性が高い。それだけ、組織のトップが素直であることは重要となる。

2.自己投資のハードル

 トップが自己投資をしない、あるいは会社への投資を行わない場合も、会社衰退のリスクを高める。組織のトップが自己投資をせずに、社員が自分を磨こうとする訳がないのである。また、会社へ投資もしかり。「どうして自己投資をしないのか」「なぜ、設備投資をしないのか」と尋ねると、「お金がないから」という答えが返ってくる。これは「投資」を「投資」と考えていないのだ。「費用」と考えているから、優先順位が下がり、お金がなくなってしまうのだ。自分や会社の成長を担保する「投資」としっかり位置づけていれば、お金が無くなる前に、実施できるはずなのである。あるいは、無くなる前にリターンが来るはずなのである。言い訳をして、投資をしていない状況では、会社のリスクは高まり続けていってしまう。

3.人材育成のハードル

 人材育成はうまくいかないことが多い。距離の取り方がわかっていないため、過剰に現場に干渉したり、逆に放置してしまったりする。「手を離せ、目を離すな」が基本なのに、「手も目も離す」ことが多い。特に、中小零細企業では、社長が何役もこなしていて、社員から目が離れやすい。気付いたら、会社に来なくなっていた、とんでもない問題を起こしていた、なんていう事例は本当に多い。どうしても両極端に走りがちである。ある飲食店では、常に罵声が厨房から聞こえていた。どうやら店長が従業員を注意しているのだが、それがあまりにもひどかった。そのお店に行く度に、店員の顔が変わっていた。定着しないのである。悪循環になっていた。お互いが楽しく働ける職場はどういう職場なのか。しっかりと考えて育てていって欲しい。