【第308号】サービスの本質

1.戦う場所はどこも同じ

 「サービスの品質を向上させよう」「サービスの水準を落とさない」などと言われるが、どこまで本気で戦い方を検討しているだろうか。地方であろうと、都心であろうと、求められるサービスの質や水準は、変わらない。サービスの対価として払うお金(利用料など)が本来の目安だが、競争が激化してきており、それも受け入れられなくなってきている。「単価が安いから、サービスはこんなもの」と言っていると、ライバルに負けてしまうこともある。サービスで勝負しているはずの業界でも、わかっているはずなのだが、実践していくことは難しいようだ。ディズニーリゾートのチケット料金の値上げには、優秀なキャストが集まらなくなっているから、と一部で報道されたが、どうなのだろうか。

2.見えてきた課題

 ディズニーリゾートのリピート率は、95%以上と言われる。その土台が崩れ掛かっているというのだ。本当なのだろうか。実際、訪れてみると、ハードはやはり素晴らしい。アトラクションはいろいろと工夫されているし、イベントや出し物は飽きさせないものが用意されている。ところが、一番肝心なソフトの部分に課題が見え始めている。「笑顔」がないキャストがいるのだ。これは何度も訪れている筆者もびっくりである。また、動きにスマートさがない。「夢の世界の案内人」っぽくないのである。衣裳もサイズがあっているの?というキャストが多い。まだある。サービスが「作業」になってしまっている。困っているゲストがいて、そのゲストの困りごとをどうやって解決してあげるのか、考えられていない。とりあえず、聞かれたことに答えておくか、のレベルなのである。

3.常に進化していないといけない

 これは「人材育成」が追いついていないのであろう。特に「ビジョン」が共有されていない。キャストは「安全」「親しみ、礼儀正しさ」「演出」「効率」の基準に照らし合わせて行動することになっている。しかし、前述の「作業」では、「親しみ」も「演出」もない。自己の「効率」だけが優先されてしまっている。「これぐらいは仕方ないだろう」と思っているんじゃないのかな、と思ってしまうことが多々あったのだ。入場時の案内、ファストパスの発券所の案内、トイレの案内、いずれも笑顔がなく、「あちらです」と言われただけだった(かなり残念)。チケット料金が上がって、サービスの質が低下したままだと、最近頑張っている他のリゾート施設に負けるかもしれないという危機感はあるのか。