【第351号】数値計画の大事さ

1.起業できても継続できない

 最近似たような事例の相談が多い。それは、起業したときに作成した「事業計画書」で、公的機関や金融機関から助成金を得られた、お金を借りられたから、その「事業計画書」を大事にしてその通りにやろうとしてきたのに、どうもうまくいかないので、どうしたらよいのか教えてください、というものだ。ほとんどのケースでその「事業計画書」は“絵に描いた餅”であることが多い。公的機関の担当者も、金融機関の担当者も(あるいは起業支援の税理士さんも)書類審査はできても、事業成功の可能性まで深く検討できないからだ。作成された「事業計画書」を拝見すると、びっくりすることが多い。裏付けのない、根拠のないデータがちりばめられた計画書だからだ。

2.「決断」するための材料がない

 そのような延長線上で経営するために、投資をすべきなのか、撤退をすべきなのか、縮小すべきなのか、などの経営者としての決断をしようにも材料が揃わない。数値計画への重要性が理解されていないから、業績管理の仕組みがない。つまり「どんぶり経営」なので、どこにムダがあるのか、どこが収益の柱なのかはっきりしない。経営者は決断のための材料が少なくても決断しなくてはならないが、材料がない中では決断できない。相談を受けた時に、「もっと早く手を打っておけば・・・」というケースは少なくない。税理士さんにアドバイスを求めたのに、とあとで嘆いても遅いのである。経営者は儲けるための作戦を練るための相談相手を持つべきなのだ。

3.頑張っても頑張っても儲からない

 ある女性経営者は、本来お金をとるべき業務をサービスでやってしまい、最終的にお金が残ればいい、との考えで利益構造を考えてしまっていた。これも一種のどんぶり経営である。なので、自分が頑張っている部分がサービスになってしまい、コントロールできない他人にお願いする部分が利益の重要な部分を握る結果となってしまった。業績が不安定になるばかりか、役員報酬がほとんど残らないという状況に。でも、これも筆者が指摘するまでその経営者は気づいていなかった。指摘後の第一号案件では、しっかりとクライアントにこれまでサービスでやっていた部分を請求することができ、一気に収益構造が改善することになった。頑張っても利益が出ないのではなく、頑張り方を修正する必要があるのだ。そのためには、しっかりと数値計画と管理が求められる。そんなお手伝いが増えてきている。